“純愛”で仕込む、会津若松の若手蔵元

 

 会津若松のシンボル・鶴ヶ城のお膝下に蔵を構える宮泉銘醸。

約30年前、全国に先駆けて蔵を一般公開し、『會津酒造歴史館』を併設する酒蔵だ。

蔵の井戸水は酒造りに最適な灘の<宮水>と極めて近い水質を持ち、その仕込み水と契約栽培田で育てる地元米で酒造りを実践。

復活させたブランド<寫樂>が、いま日本酒通を唸らせている。

 

昭和29年に会津の老舗・花春酒造から分家創業した宮泉銘醸。300石ほどの小さな蔵だったため、当時は規模の大きな酒蔵への桶売り(下請け製造)が中心だった。

時代が進み、醸造設備の近代化が整うようになると酒造りは自社一貫生産が主流になり、桶売り桶買い制度も陰を潜める。当然、宮泉も蔵として新たな活路を見出さなければならなかった。

そこで現社長・宮森義弘さんの父である先代がとった打開策が、酒蔵を一般公開することだった。

今では酒蔵見学が出来る蔵は全国に存在するが、当時は前例がなく宮泉が先駆けだったそう。

「会津若松は観光客が多く訪れる場所なので、一般の方々にも蔵を開放するようにしたんです。それが今から約30年前。会津若松の酒蔵では、間違いなく一番最初でした」。

見学に来たお客さんに売店でお酒を買ってもらうことにより、蔵の経営は安定した。しかし、徐々に他の酒蔵も一般開放をはじめると見学客は分散。

先代はシステムエンジニアをしていた義弘さんを蔵に呼び戻し、再建を任せた。

「再び活路を見出すには、酒造りのレベルをあげるしかなかった。美味い酒を作らないと、お客さんが離れていくのは当然です。僕も3年間必死で酒造りの勉強をして蔵に戻り、見直すべき点はすべて改善しました。米の洗い方、吸水方法、酒の絞り、貯蔵方法、火入れ…、昔から働いている蔵人とは何回もバトルしましたよ(笑)。でも、美味い酒を造るには、何を言われようとも自分の信じた道を突き進むしかなかったんです」。

美味い酒を造るには、試行錯誤の連続。義弘さんの試行錯誤は続く。

「僕は甘味の中に渋苦があるフレッシュな酒が好きなので、熟成を進ませない瓶貯蔵を基本にしています。でも、気温、米の状態、酒質によっては生成の手法を変えたほうがいい酒になることもある。やっぱり酒造りは奥が深いですよ」。

そんな義弘さんが、幼い頃から大切にしてきた言葉は“愛”。

宮泉が復活させた看板銘柄<寫樂>を見ると、そこには“純愛仕込”とある。

「僕は愛をテーマにずっと生きてきたんです。どんなモノも、愛を込めて作ることが大切ですよね。お酒だってそう。造るときも売るときも、酒販店さんや飲食店さんとお話するときも、愛情を持って対峙することが最上級の敬意にあたると思うんです。だから“純愛仕込”というのも、決してふざけているわけじゃないんですよ(笑)」。

現在、宮泉は酒米作りも自社の契約栽培田で行なっている。

会津美里町で育てる<五百万石>、会津若松市湊町で育てる<夢の香>など、米作りに最適な土地で減農薬栽培に取り組んでいる。

「米作りをすることで、米のことが知れますからね。米を知れば、酒の仕込み方も変わってきます。震災の影響で放射能の心配もありますけど、土壌、仕込み水、酒米、精製酒の4段階で検査を受けています。安心、安全で美味しいお酒を造ることが、我々の使命ですからね」。

 

400石ほど瓶貯蔵できる充実した冷蔵施設を備え、品質管理も徹底している宮泉。いい酒を造るために、出来ることは何でもする。それが義弘さんのスタンスだ。

人気銘柄<寫樂>からは前述した酒米<五百万石>や<夢の香>を使った酒のほか、<山田錦>や<雄町>、新たに<酒未来>で仕込む酒も登場する。

酒造りに懸けた男の試行錯誤という挑戦が、今までにない極上の酒を生み出す。

 

 

『宮泉銘醸』

福島県会津若松市東栄町八番七号

http://www.miyaizumi.co.jp/

 

 

『會津酒造歴史館』

☎0242-26-0031

営業時間:8:30〜17:00(※冬季は9:00〜16:30)

入場料:大人300円(一般)、250円(団体)