会津の魂と風土が醸す“土産土法”の酒

 

“土産土法(どさんどほう)”とは、地元の人間が地元のものとやり方で仕事をするという言葉。この精神を蔵訓に掲げる髙橋庄作酒造店は、田んぼを耕すことから酒造りをはじめる。有機栽培酒米の<五百万石>で造る純米酒を筆頭に、看板銘柄『会津娘』を醸す明治8年創業の老舗だ。

昭和64年に現・蔵元が普通酒の全廃を決断してから、髙橋庄作酒造店は全量特定名称酒の蔵として酒造りを続けている。

蔵を構える会津には現在12の酒蔵が存在するが、

その多くが普通酒8割、残り2割で純米、純米吟醸、吟醸、大吟醸、本醸造などの特定名称酒を仕込む。

普通酒を全廃して全量特定名称酒の蔵にシフトするには、石数も売上も落とすリスクが伴う。

髙橋庄作酒造店にとっても大きなターニングポイントであり、同時に相当な苦労があったに違いない。

 

現在、髙橋庄作酒造店が醸す酒は9割が純米酒。

自社の田んぼを所有し、米作りからはじめる兼業農家の酒蔵にとっては、

純米酒を醸すことが最も自然だからだ。

現・蔵元の息子さんで杜氏を務める髙橋亘さんもこう話す。

純米酒は吟醸酒や醸造酒と違って最後にアルコール添加という行程がないんですね。だから醪を絞って上槽した時点で酒質が決まるんです。出来上がった純米酒を飲むと、麹の経過がどうだったかなど酒造りに対するフィードバックがある。酒造りをする人間としては、そこが面白いところでもあるんですよ」。

 

高橋庄作酒造店が仕込みに使う酒米は<五百万石>や<夢の香>など会津産が全体の9割を占め、

残り1割の酒米<山田穂>、<雄町>、<短悍渡船>で純米吟醸を仕込んでいる。

なかでも蔵のアイデンティティーとなっているのが、有機栽培で育てる会津県産<五百万石>だ。

 

いわゆるオーガニックの考え方と、僕の有機米に対する考え方は少し違うんですよ。その土地にあるもので土を作り、足りないものは環境の中で改善し、気候や水などの資源を最大限に活用して米を育てたいんです。大切なのは有機JASの認定規格よりも、環境資源の循環と活用法を考えること。そういう意識を持つと、酒米はただの原料ではなくなるんですね。肥しも水も、ただの養分ではなくなります。これが土産土法という我々の価値観なんです」。

日本酒は美味しさだけでなく、バックグラウンドが必要だと考える高橋さん。

なぜなら酒造りは農業と密接な関係にあり、これこそが日本の文化だからだ。

そのバックグラウンドが表現された味わいこそが、地酒の魅力であり日本酒の面白さ。

髙橋庄作酒造店が醸す『会津娘』には、会津の魂と恵まれた風土による味わいがある。

この料理にはこの酒がマッチするとか、そういう提案は僕の専門ではありません。あくまで僕は製造の技術者ですから。でも、お酒にはひとつルールがあると思うんです。会津のお酒で言えば、会津の食材には必ずマッチするんですよ。何でかって言うと、お酒を作る工程にはYの字の選択肢がたくさんあるんですよ。温度設定にしても絞りのタイミングにしても…。でもどっちを選択するかは、会津人だから直感的に働くものがあるんです。それは酒造りだけではなくて、農業も酪農も同じだと思います。だから、会津の人が造る酒は会津の食べ物とマッチするんですね。我々が造る『会津娘』も、飲んだときに会津の味わいや景色が伝えられるようなお酒でありたいと思っています」。

 

 

『髙橋庄作酒造店』

福島県会津若松市門田町一ノ堰755

 

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