梅リキュール『星子』と、その生みの親

梅のリキュール『星子』は、その年に収穫した梅を厳選して作る、無添加・単純濾過のお酒。フレーバー主体の梅酒とは製造工程も味わいも異なる、正真正銘の梅リキュールだ。「地球という星に住む最高の子が俺たちだよ。だから『星子』」。この究極のジャパニーズ・リキュールを生み出したのが“DANNY”と呼ばれる男。2012年3月11日、東日本大震災からちょうど1年が経過したその日に還暦を迎えたDANNYさんを祝いに、富士虎は<bar howl>へ向かった。

『星子』をクリエイトした生みの親は、

1970〜80年代に<東風(トンフー)><玉椿><芝浦GOLD>などの名店を渡り歩き、

TOKYOのナイトシーンを演出してきた伝説のバーテンダーだ。

何が伝説かと言えば、そのキャリア、生き様そのものが伝説。

アメリカ放浪時代の濃厚なエピソードなど挙げればキリないが、

その逸話をここで紹介するような野暮なことはしない。

なぜなら<bar howl>でDANNYさんが作るお酒を楽しみ、

カウンター越しに直接ご本人から話を聞くことに意味があるのだから。

梅のリキュール『星子』は1979年からDANNYさんが試作研究に着手。

そのキッカケを「大学時代にホテルニュージャパンのバーへバイト行ったら、日本のリキュールが置いてなくてさ。無いものに気づいちゃったから、俺が作ろうと思った」と話すが、完成までは試行錯誤を重ね17年もかかったそう。

「そりゃあ時間かかりますよ。梅を収穫して、リキュールに仕上げる方程式が作れるのは1年に20パターンくらい。50mプールの底にぜんぶ数字を書いてるようなもんだから……。でもさ、楽しかったよ。で、最終的にはね、体力が負けて脳味噌がイッちゃうんだよ。そうなったときに「これでいいんだよ」っていう声が聞こえてさ。そっからしばらくは、イリーガルで作ってた(笑)。非合法で酒を造る人を“moonshiner”って言うんだけど、月明かりの下で密造するって表現に憧れてね」。  イリーガルと言うと誤解があるかもしれないので補足すると、約8年間みずからのバーでモニタリングを重ね、2005年に『星子』と名付けて販売が“リーガル”に開始される。

長い研究の末に導き出された方程式で作られる『星子』は、甘酸っぱい梅の風味とハーブの薫りが特長だ。この味わいは他の梅酒やリキュールとはまったくの別物、というより別格。この世界基準のリキュールは、全国のバーをはじめ京都老舗料亭や海外でも支持されている。

『星子』は和歌山県にある有機JAS認定工場で製造されている。毎年、その年に収穫し厳選された梅の風味や酸味など考慮し、スパイス配分や糖分のバランスを微妙に変えて調合。まさにDANNYさんの「MY Proud Creation」なのだ。

「その年に穫れた梅の出来で『星子』の味は変わる。だからビンテージも売ってるんだよ。やんちゃなヌーボーでも、何年かすると豊満な星子ちゃんになる。だから楽しい。熟成させたのに味も変わらないんじゃ、逆に怖いよね。整形してるみたいでさ(笑)」。

毎年11月に誕生するヌーボーも楽しみだが、その製造年による飲みくらべも『星子』の楽しみ方のひとつ。そして製造者から直接サーブしてもらうことができるという点も、他のリキュールでは味わえない魅力だ。

「どこの店で飲んでも一緒だよ。ただ違うのは、ここ(howl)が聖地だってこと。空気が違うでしょ」。

 

 

http://hoshiko.jp/

 

『bar howl』

東京都渋谷区神宮前2-3-26-1F

03-5771-5577

 

↑ 『星子』で作るカクテル【星音】。このレシピを含め、考案したカクテルを「誰でも楽しめるように」とホームページで公開している。ちなみに現在では当たり前となっている、この黒くて細い2本のステアリングストローは1979年にDANNYさんが考案したもの。特許を取得すると1本あたりの単価が高くなり、一般に普及しなくなるから申請しなかったという。自分の利益よりもみんなのハッピーを大切にするのがDANNYさんの生き方だ。

 

 

 

PHOTO:MAKOTO MOTOMIYA