季節の移ろいを表現する南会津の銘酒『ロ万』

 

酒米や仕込み水はもちろん、杜氏も蔵人も“地元”にこだわる花泉酒造。南会津の豊かな自然と人の和が生み出すお酒は、全銘柄に伝統手法<もち米四段仕込み>を採用した独特の旨みとキレが特徴だ。季節ごとにバリエーションが楽しめる代表銘柄『ロ万(ろまん)』シリーズで、酒造りの美学と南会津の魅力を表現する。

 

南会津は豊かな自然に囲まれるだけでなく、

日本三大祇園祭『会津田島祇園祭』をはじめ

国の重要伝統的建造物群保存地区『大内宿』や『前沢集落』などが歴史を今に伝え、

先人たちから受け継ぐ伝統技術や風土を大切に生きる精神が根付く土地だ。

そんな南会津に蔵を構える花泉酒造は、

地元の米、水、人にこだわった酒造りを続けている

醸造工程で特徴的なのが、仕込みの最後に餅米を投入する<もち米四段仕込み>。

この伝統的な造りで純米酒はもちろん普通酒まで仕込む蔵は、全国的にみても少ない。

 

「普通は餅米がブドウ糖化されて甘くなったときに搾ってしまうんですが、弊社は酵母にブドウ糖を食べさせて味にキレが出るように仕込んでいます。杜氏は戦中までは南部杜氏(岩手)でしたが、戦後は地元の杜氏、地元の蔵人にこだわって酒造りを続けています」

 

 

そう話す専務の星誠さんも生粋の南会津人。

山菜やキノコにも詳しい森のスペシャリストで、地元の自然をこよなく愛している。

「地元の農家さんが大切に育てた酒米だから、弊社は玄米で仕入れて自家精米にこだわっています。精米担当がいるので毎年異なる米の出来をしっかり判断できるメリットもありますが、循環農業に取り組めるのも自家精米ならではのメリット。玄米を削って最初に出る『赤糠』は蔵の目の前にある南会津の特産品『南郷トマト』の畑に、次に出る『白糠』は契約酒米農家の田んぼに有機肥料として撒いて有効活用しています」

 

花泉酒造で使う酒米はすべて会津産。

麹米は有機・減農薬で栽培された会津産「五百万石」と南会津産の福島県オリジナル酒米「夢の香」、

掛米は南会津産「タカネミノリ」と「夢の香」、

四段仕込みに使う餅米は南会津産「ヒメノモチ」を使っている。

 

 

仕込み水は蔵の裏手にそびえる標高1000メートルの登屋山に湧く高清水。

花泉命名の由来になった南郷の花「ヒメサユリ」の群生地のほか、

富士虎が取材に伺った6月はブナや白樺の下にわらびやぜんまいなどの山菜が元気に育っていた。

水芭蕉やワタスゲなどの高山植物が咲く湿原も点在し、

ハチョウトンボなどの珍しい生き物も生息しているそう。

花泉酒造のアイデンティティーでもあるまろやかな酒質は、

この水源の森100選に認定された豊かな自然が生み出す

柔らかくミネラル分の低い名水の賜物だ。

 

 

花泉酒造は大正9年に南会醸造株式会社として設立後、

一度は倒産に追い込まれるが地元の篤農家5人が南会醸造合名会社として再建。

戦中戦後に『富田正宗』、『伊南川』と続いた銘柄を『花泉』に変え、

平成元年に社名を銘柄と同じ花泉酒造合名会社とした。

そして平成18年に『ロ万』シリーズを登場させ、

蔵が目指す酒造りの方向性を決定づける。

「私が都内へ営業に行き始めた頃は、まだ花泉ブランドしか造っていませんでした。営業先をまわる度に、これではインパクトが弱い、何か新しいブランドを開発しなければ蔵は存続していけないと痛感したんです。その頃ちょうど杜氏が入れ替わったタイミングで、新しく迎えた杜氏が<うつくしま夢酵母>(福島県酒造協同組合独自酵母)で醸す酒の研究をしていたんですね。で、試作の原酒を飲ませてもらったら衝撃的に美味しくて。これならイケる! そう確信して、『ロ万』シリーズを造りはじめたんです」

 

ちなみに『ロ万』と命名されたのは、

星さんがタンクに書く“号”の文字が“ロ”と“万”に見間違えられたのがキッカケ。

この“ロ万”という文字に「酒造りはロマンで醸し出される」という想いをのせた。

純米酒にこだわり、吟醸酵母<うつくしま夢酵母>を使用する『ロ万』シリーズは

季節ごとに名前と味を変えて登場する。

12月末に出荷される初しぼり無濾過生原酒『一ロ万(ひとろまん)』、

2月に出荷される生原酒『かすみロ万』、

4月中旬に出荷される2回火入れ『だぢゅー』、

7月に出荷される無濾過生貯蔵酒『七ロ万(ななろまん)』、

9月に出荷されるひやおろし『十ロ万(とろまん)』など

頒布会用を含めると現在11種類がラインナップ。

こうして造りのバリエーションが増えたことで、

定番酒『花泉』の種類も豊富になり

花泉酒造は季節の酒を醸す蔵として認知されるようになった。

春は山菜に岩魚や山女、夏は南郷トマト、秋はキノコ、冬はクマ汁など

南会津で味わえる四季の味覚にぴったりのお酒だ。

 

「お酒も季節によって楽しみが変わることを提案できたことは、本当に良かったと思っています。私が目指しているのは、旨みとコクがあるくせにキレがあるお酒。酸がしっかりあるんだけど透き通った甘味もある、柔らかいお酒ですね。みなさんが仕事を終えてひと口飲んだときに、その疲れを癒すような優しいお酒でありたいと思っています」

 

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花泉酒造

福島県南会津郡南会津町界字中田646-1

http://www.hanaizumi.ne.jp/