身体も地球も喜ぶ、鍛治さんが育てる野菜

福岡県糸島市は農業が盛んなことでも有名。大地の恵みをたっぷり受けた野菜は旨味が格別で、四季を通して美味しい野菜が穫れる。富士虎が取材に訪れたのは、この地で2004年から農業を始めた棚田自然ふれあい農園代表の鍛治邦之さん。農薬を一切使わず、豊かな土と有機肥料で元気な野菜を育てている。

 

玄界灘に面した海岸線から二丈岳へ登る途中に見える棚田が、

無農薬で有機肥料(畜産系の堆肥、肥料は使用せず)栽培にこだわる鍛治邦之さんが営む農園だ。

富士虎が取材に訪れたのは8月上旬。

鍛治さんの棚田には「おくら」や「ゴーヤなど定番の夏野菜以外に、

フランス原産の「カラーピーマン」や唐辛子の仲間で辛くない「スイートペッパー」など

スーパーでは見ることがない品種が目につく。

バジルも一般的な「スイートバジル」のほか、

香りが強い「シナモンバジル」や赤紫の葉をした「ダークオパール」など珍しい品種を育てていた。

「世界中の野菜から美味しいものを集めて育てています。みんなにワクワクしてもらったり、食卓に彩りを届けることが僕のテーマ。子供たちが野菜を好きになってくれることが、一番の喜びですから」

そんな鍛治さんが農業を始めたのは、今から8年前の2004年。

幼い頃からアレルギーに悩まされ、

自身の治療目的もあり指圧の資格を取得して仕事に就いたが、なかなか症状は改善されなかった。

 

「だったら自然に囲まれた環境の中で、なおかつ社会貢献できる仕事を始めようと思って。それが農業だったんです。世の中で理解されないアレルギーを抱えている子供たちも安心して食べられる野菜を育てるには、無農薬の有機栽培しか選択肢がなくてね。もちろん始めた頃は相当苦労しましたし、今も悩まされることは多いですよ。でもね、自然と向き合って毎日ワクワクできるから、農家は楽しいですね」

 

無農薬の有機栽培を実践する鍛治さんは、種にもこだわっている。

味よりも流通コストを優先して品種改良された

“まっすぐなきゅうり”が育つような種は使わない。

例えば案内してもらった畑で食べた「おくら」は

風味と粘りが強くパリパリとした食感が特徴だ。

これは昔から農家さんが育てていた固定種を継承した、

沖縄生まれ糸島育ちの「おくら」だから。

野菜本来の味を継承していくことも、大切にしている価値観のひとつ。

さらに鍛治さんは土作りも大切だと言う。

つまりは、土壌の生態系を整えてやることだ。

「土壌の生態系バランスが崩れると害虫が増えて、野菜から害虫を守るために農薬が必要になります。そこで農薬を散布すると土の中の微生物など害虫ではない生き物まで死んでしまい、さらに生態系のバランスが崩れるという悪循環が繰り返されてしまうんですね。ご存知の通り、植物は根っこで命を育んでいます。だから土の中の生き物と上手く共生していくことが大切。肥料として牡蠣殻と米ぬか、浜辺に打ち上げられた海藻などを発酵させた自家製の有機肥料を与えることもありますが、そのまま野菜が栄養成分を吸収するわけではないんですね。有機肥料を与えることで土壌に微生物が増え、そこから得られるアミノ酸やタンパク質が野菜の栄養成分となり、自然な旨味となっていくんです」

 

玄界灘で水揚げされた牡蠣の殻や糸島で収穫されたお米のぬかなど自家製有機肥料を使い、

美味しい作物を育てながら牡蠣殻によって浄化された水を海へ戻す

これこそ理想的な循環農業の形だ。

ひと通り棚田を案内してもらった後に、

鍛治さんが秋~冬に収穫できる珍しい野菜があると教えてくれた。

それが「黒にんじん」という品種だそう。

 

「いま自分が作ってるのは、トルコ系の人参の原産を品種改良したもの。もの凄くポリフェノールが強くて、ジュースにするとフルボディのワインのような色になるんですよ。抗酸化物質なので肌のケアにもなるし、美容効果もあるそうです。味も金時人参みたいな濃厚な甘みで、とっても美味しいですよ」

 

実は日本野菜ソムリエ協会認定のジュニア野菜ソムリエでもある鍛治さん。

この棚田自然ふれあい農園には、まだまだ珍しい野菜があるに違いない。

これからも富士虎は、鍛治さんが育てる元気な野菜たちに注目していきます