喜多方の風土に感謝し、自ら育てる酒米で醸す

江戸時代中期の1790年に創業した大和川酒造店は、喜多方市内で稼動している酒蔵の中では最も古い。仏教用語「身土不二」を信条に、1997年に農業生産法人 「大和川ファーム」 を設立。自社田で様々な酒造好適米を育て、飯豊山から流れる超軟水の仕込み水を使い銘酒『弥右衛門』を醸している。

 

仏教用語の「身土不二(しんどふに)」を信条に、蔵から四方四里=近郊でまかなえる喜多方の風土から生まれた素材で酒を醸す大和川酒造。自社農園で酒造好適米を栽培し、現在は約30町歩の面積で作付けを行なっている。早生品種の「五百万石」と「夢の香」 から始まり、中生品種の「美山錦」、晩生品種の 「雄町」と「山田錦」を栽培。自社田のほか、契約農家に依頼して「山田錦」の無農薬栽培にも取り組んでいる。

有機農法に力を入れている熱塩加納村の農家さんとの出会いもあって、米作りを始めた頃から減農薬栽培への取り組みを続けています。農薬を使って育てれば楽なんですけど、なるべくなら自然の力で育てた原料で酒造りをしたいので。うちは自分が苗作りから携わったお米で仕込みをするので、その米が育った田圃をイメージしながら酒造りが出来るんですよね。それは凄く幸せなことだと思っています」

大和川酒造店では精米も自社で行ない、稲刈りした後に籾を乾燥させる際の水分量までコントロールできる。そのため割れの少ない上質な米が仕上がり、麹作りにも大きな影響を及ぼすと言う。代表銘柄の『弥右衛門』が全国新酒鑑評会で3年連続(平成22年酒造年度〜)金賞を受賞している理由も、そういった誠実な仕込みによるものだ。しかし、現在28歳の若手杜氏・佐藤哲野さんは、この喜ばしい結果に甘んじることなく改善点を挙げる。

「弥右衛門のラインナップに『伝家のカスモチ原酒』という米麹の量を倍くらい加えて低温長期発酵させて造る超甘口(日本酒度マイナス25)の看板商品があるんですけど、最近は昔ほど個性がなくなったという声もあって…。こういう仕込みで醸す酒は他にはないですし、“伝家”の酒の再建にも力を入れないとと思っています」

 

代表銘柄の『弥右衛門』のほかに、哲野さんが4年前(21BY)から醸しているのが『野恩』というお酒だ。自身の名前にある「野」を自然と捉え、そこに対する「恩」を忘れずに醸すという想いが込められている。生産量は一升瓶で500本。その1本1本にナンバリングが施されている。

最初は辛口でしっかりキレる原酒のお酒を目指していたんですが、最近は秋くらいに味がのってくる適度な熟成感も欲しいなと思っていて。だから『弥右衛門』とはまったく異なるコンセプトのお酒ですね。常温から燗まで美味しい、しっかりした酒を目指しています。21BYが五百万石、22BYと24BYが雄町、23BYが山田錦というように使用する酒米も毎年違うので、造りも少しづつ変えています。今年(24BY)も原酒なんですけど少しアルコール度数が低めに仕上がるようにしました。なおかつ去年までにはない軽い甘みも出せたので、やっと自分のイメージに近い酒が絞れたかなと」

来年(25BY)の『野恩』は、哲野さんが一番お気に入りだという酒米「夢の香」で醸す予定だそう。自ら育てる米と、喜多方の自然が育む豊かな水と風土で醸す自信作が待ち遠しい。

 

「今まで通り米作りに力を入れて、すべての酒米を自社でまかなえるようになるのが目標。自然との調和、地元との調和、そして味も調和のとれた酒を醸すことが僕の理想です。親の代から蔵元は兄、杜氏が弟という関係が続く蔵なので、先代から受け継いできた大切な蔵や環境を兄弟で守っていきたいと思っています」

 

 

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大和川酒造店(北方風土館)

福島県喜多方市字寺町4761

http://www.yauemon.co.jp/