個性的であることを信念に持つ、喜多方の新鋭蔵

“酸”と“甘”のバランスにこだわった酒を醸す会津のニューウェーブがいる。喜多方の峰の雪酒造場で杜氏を務める佐藤健信さんだ。彼が酒造修行から蔵に戻ったのは、30歳の頃。23BYからスタートさせた純米吟醸酒『Yamatoya Zennai』は、まだまだ生産数は少ないもののファンを増やしている。万人が好む酒よりも、目指すのは個性的であることだ。

喜多方で稼働している酒蔵の中では、昭和33年創業と最も若い蔵である峰の雪酒造場。かつては大手酒造メーカーの下請け(桶売り)や都内出荷用の普通酒を中心に製造していた、地元でも知名度の低い蔵だった。しかし、杜氏を務める佐藤健信さんが新潟の麒麟山酒造で営業3年、造り3年の修行を積んで蔵に戻ってからは、そのスタンスが大きく変わった。

「わたしが蔵に戻るまでは、ほとんどが普通酒でした。ちょうど『AIZU MEAD)』っていうはちみつのお酒を発売した頃だったので、お客さんから蜂の雪酒造さんって、日本酒も造ってるんですねって言われたり……。蜂じゃなくて峰なんですけどね(笑)。今では笑い話ですけど、そのときは落ち込みましたよ。だから、しっかり日本酒を造って、『峰の雪』って名前を広めないとダメだと思ったんです。儲かる儲からないの話ではなくて、会社として、酒の造り手としてそうあるべきだと思いました」。

 

蔵に戻った23BYから、それまで普通酒しか製造していなかった蔵で純米吟醸酒造りという初めての取り組みをスタート。出来上がったお酒を『Yamatoya Zennai (ヤマトヤゼンナイ)』と名付け、まるでワインのようなボトルで登場させた。

 

ヤマトヤは本家の屋号で、ゼンナイは襲名してきた名前なんです。淡麗辛口が基本の新潟で修行してきたんですけど、わたし自身は甘口のお酒のほうが好きなんですね。アルコール度14%でも、酸がしっかりしていれば甘みのバランスがとれる。そういう酒質を目指しました。万人にウケるお酒ではないと思いますけど、10人飲んで12がハマってくれるくらいで、嗜好品としてはちょうどいいのかなと」。

 

二年目の24BYでは麹造りを改善し、日本酒度マイナス2(ちなみに23BYはマイナス6)という数値ながらもしっかり甘みの感じられるお酒に。また、米を溶かさず酒粕をたくさん出すことで、秋頃になっても味がダレないきれいな酒に仕上げるという峰の雪の伝統も踏襲した。さらに24BYでは、『峰の雪』ブランドで「かすみ」や「にごり」、「原酒」などをスポットで展開。蔵に戻ったときに決意した“改革”を実行に移した。

 

「やっと地元の人たちにも『峰の雪』でもこんなお酒があるんだってことを認知してもらえたと思います。そうやっていいお酒が造れるようになったら、次は普通酒を直していこうと思っています。どこのお蔵さんもそうでしょうけど、売れていたものに手を出すのは最後の砦。新しいブランドを立ち上げるよりも、普通酒をリニューアルするほうが難しいですからね」。

 

今後は普通酒のリニューアルを視野に入れながら、大吟醸などバリエーションを広げていくアプローチや米造りにも挑戦したいと言う佐藤さん。そして、もうひとつ目標がある。

今まで出品してこなかった国内の鑑評会で金賞を獲りたいと思っています。金賞酒に選ばれたからって、それでPRになるとは思っていません。でも、個性的なお酒を造りながらも金賞酒が造れる蔵であるというアピールはしていきたいなと。一番大切にしていることが、飲んだ瞬間に『峰の雪』だってわかるような個性的な酒を造ることであるのは変わらないので」。

 

 

※『AIZU MEAD』

蜂蜜を発酵させた蜂蜜酒(ミード)は、ワインやビールよりも歴史のある人類最古のお酒。峰の雪酒造場の『AIZU MEAD』は、会津のトチの木の花から採取した蜂蜜のみを原料に、飯豊山の伏流水と酵母から造られている地産地消商品だ。トチは植えてから花が咲くまで30年もかかるため、とても貴重で高級な蜂蜜。峰の雪酒造場では、ミードのパイオニアとしても独自の味と技術を突き詰めている。

 

 

峰の雪酒造場

福島県喜多方市桜ヶ丘1丁目17番地

http://minenoyuki.com/