日本酒マガジン

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渡邊 智昭

admin

70年代半ば生まれのライター稼業。2杯目以降に出会った人の顔は、次会ったときに覚えていないのが悩みの種。

2012年9月
   
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酒の飲み方


 

酒場にはそれぞれのマナーがある。

 

賑やかな立ち飲み屋もあれば、

 

カウンターだけの落ち着いたバーもあり、

 

それぞれに暗黙のルールがある。

 

どの店にも鎮座する常連客への配慮も必要だ。

 

初めての店で微妙な空気をうかがいながらグラスを舐める、

 

ある種の気まずさは酒飲みなら誰しも経験済みだろう。

 

 

 

1年ほど前、仕事相手のS氏と2人で飲む機会があった。

 

安い赤提灯でとりあえず腹を満たし、2軒目にS氏お気に入りのバーへ。

 

「響」「山崎」「白州」など国産の高級のウイスキーが壁に並び、

 

極力落とした照明の下で白髪髭面のマスターが

 

丁寧にロックをステアするような店。

 

 

 

しばらく呑んでいると、隣に30代半ばのキャリアOL風の女性が。

 

どうみても1人で、誰かを待っている様子もない。

 

 

 

「お一人ですか」

 

 

 

「ええ、近くのホテルで会社の会合があったんですけど、

 

騒がしいから抜けだしてきたんです」

 

 

 

と、なんとなく軽い会話を交わしていると、隣のS氏がスネ出した。

 

 

 

「えーなんすかー!!!そのこなれた感じは!!!!」

 

 

 

まあまあ、となだめて席を替わり、その女性の隣へS氏をあてがって

 

まず普通に会話してみるように促した。

 

 

 

すると、

 

 

 

「え、彼氏はいるんですかー!?」「どこ住んでるんですかー!?」

 

 

 

と、ベロベロになって学生ノリで質問責め。これでも30代半ばの男である。女性もしばらく大人の対応をしてくれていたが、S氏が「電話番号を教えてくださいよー」としつこく食い下がるとさすがに女性がキレた。

 

 

 

「会って数分のあなたに電話番号を教える理由はないし、男性を探しに飲みに来ているわけではありません」

 

 

 

とピシャリ。まったくもってその通りである。

 

 

 

その後、グラスを飲み干すと女性はそそくさと席を立ってしまった。

 

S氏は「なんで教えてくれないんスかね?クソ、あのブス!!」と言いたい放題。すでに同じ話を何度も繰り返す酩酊状態になっている。マスターもすっかり呆れ顔だ。

 

 

 

 

 

 

 

しかし、自分はこのS氏の飲み方が嫌いになれない。

 

 

 

 

 

そうだよ、酒なんか好きに飲めばいいじゃないか。

 

白髪や髭で武装したトンチキ雰囲気親父に気を使う必要なんてない。

 

「ここはこういう店だから」なんて講釈たれてくる常連客もクソくらえだ。

 

何もお勉強するために酒を飲むわけじゃない。

 

気持よく酔っ払うために酒を飲むんだよ。

 

 

 

好き勝手に暴言を吐いて女性の前では精一杯見栄を張り、

 

天真爛漫に酔いつぶれるS氏の姿を見ていると、

 

短パンTシャツで坊主頭のデブのくせに

 

したり顔で気取ってしまった自分の振る舞いが

 

突然猛烈に恥ずかしくなる……。

 

 

 

 

 

Sさん、また飲みましょうね。


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